宇宙すごいって話。
近所のゲオにて。
ガンダムUCの5巻が出た。
新作料金は貧乏人の財布には少々厳しいが、アニメは準新作になるまでが
天竺への道のりよりも長いからここはあきらめて借りることにする。
ふと、となりの4巻に目がいく。
あれ?おれこれ借りたっけ?
裏パケを見る。
砂漠で戦っている…
あれ、砂漠で戦うシーンなんてあったかしら?
んーいや、観てない…気がする。
俺の中のゴーストが「観てないんじゃない?たぶん。」ってささやいている。
とりあえず借りる。
冒頭のシーンで、「あ、これ前に観たよ観た観た。くっそ役立たずの俺の中のゴースト乙であります。」のお約束。
まぁいいや、5巻いきなり観ても前までの流れを忘れてるからとりあえず観とくか…。
…と何気なく「なとりのあたりめ」をしゃぶくり回しながら観てたら素敵なシーンがありました。
以下
星空の下、反連邦組織に属する偽装貨物船ガランシェールの船長スベロア・ジンネマンと主人公のバナージとの会話
———————————————–
何で泣く?
あんまりきれいで…。
地球が汚染されているなんて話が嘘に思えてくるな。
だが、ここいらの空も昔より汚れている。
砂漠も、もうダカールの喉下まで迫っているらしい。
すべて人間のやったことだ。
乱開発やコロニー落としや隕石落とし。
人が自然から生まれた生き物なら、
人が出すゴミや毒も、自然の産物ってことになる。
このまま人間が住めなくなったとしても
それはそれで自然がバランスをとった結果、ということなんだろう。
自然に慈悲なんてものはない。
昔の人間はそいつを知っていた。
ほかならぬ自然の産物の本能としてな。
だから、生きるために文明を作り社会を作って身を守った。
あぁ、だがそいつが複雑になりすぎていつの間にか人は
そのシステムを維持するために生きなきゃならなくなった。
挙句、生きることを難しくしちまって、その本末転倒から脱するために宇宙に新天地を求めた。
そこでまた別のシステムってやつができあがった。宇宙に棄てられた者・スペースノイドに希望を与え
生きる指針を示すための必然。それがジオンだ。
地球に残った古い体質はそれを否定した。出自の違うシステム同士が相容れることはないからな。
どちらかがどちらかを屈服させようとするだけだ。
でも、連邦って言う統一政府があって宇宙に100億の人が住んでる世界なんてきっと昔は夢物語でしたよね?
そういう可能性も、人にはあるんじゃないですか?
二つの考え方がいつか一つになることだって。
みんなが平等に束ねられたわけじゃない。
はじかれてつぶされた連中の怨念は今でもこの地球にへばりついている。
悲しいことです、それは。
あぁ、悲しいな。悲しくなくするために生きているはずなのに。なんでだろうな。
…バナージ。
わかってますよ!男が人前で泣くもんじゃないって言うんでしょ!?
いや…人を想って流す涙は別だ。何があっても泣かないってやつを、おれは信用しない。
—————————————————
あれ?なんか目から緑色の汁が…。ペロっ あ、これ青汁だ!
最初にゲオで借りて観たときにこのシーンをなんであんまりちゃんと観てなかったんだろ?
なんというか
連邦とジオンの関係性をここまで端的に説明しているシーンっていままであったんでしょうか?
その無駄のない美しい台詞回し。「ふぅああ、しゅごいいいいい!!」というなんだか気持ち悪い感嘆の声がミルクと一緒にもれてしまいました。(ミルクは嘘です。)
「なんで連邦とジオンって喧嘩ばっかしてんの?アナハイムエレクトロニクス製のワニワニパニックとかで勝敗決めちゃえばいいじゃん。」
とか幼少期からずっと思ってたのですが、
決着がつくことなどないということも含め、長年にわたる疑問がスッキリした瞬間でした。(ガンダムを知っているようで知らないニワカ層なんで)
途中、台詞の中でややパワープレイで乗り切った感のある箇所もありますが、
あくまでこれは「船長個人の考えを言っている」だけのシーンなので、
むしろややいい加減な台詞回しのほうが「らしい」ですもんね。
げんこつにモノを言わす無骨な船長が、いきなり饒舌に政治を語りだしたら気の弱いおれなんか多分うんこもらしちゃうし。
全然関係ないけど芥川龍之介は帝大卒業時の卒論がめちゃめちゃ短かったらしいです。
それに対し担当の教授は怒るどころか、必要最低限の言葉ですべてを表すその文章に感嘆したといいます。
創作において、肉付けするのはヒマさえあればけっこうできちゃったりするもんですが
作品における無駄を抜いていくのは創造性と勇気が必要です。これをできちゃう人ってすごいよね!っていうのと
やはり言葉を商売にしているプロはすごいなぁ、と感動しました。って話でした。
ちなみに本作品の脚本はむとうやすゆき氏。
…ん?なんかそうなると彼らをスタッフリングした監督もやっぱすごいってことだよな?
ん?そうすると監督の遺伝子をつくりあげた監督のご両親含む御先祖もリスペクトしなきゃいけなくなり…
おや?なんだかんだで最終的には人類を育てた母なる大地もリスペクトの対象に…
あ…地球を生んだのは宇宙で…むしろ宇宙がすごい…
宇宙すごい!!宇宙がすごいよみんな!!
余談ですが、このシーンで使われている曲は
澤野弘之氏の「On your mark」という曲のピアノバージョンです。
この曲がまたすばらしくて…。ほろりと頬を伝う…ペロ…あ、これ青汁だ!
カテゴリ:漫画・アニメ
2013/1/26 10:00 | Posted by おの